コロナ前は手付かずだった労務管理の課題
まず大野様の普段の業務内容をご紹介いただけますか。続いて、人事労務管理システムの導入を検討しようと思ったきっかけをお願いいたします。
大野亜矢子氏(以下、大野)
「俺の」に中途入社して2年弱になります。それ以前からずっと人事が専門で、「俺の」でも人事、労務管理、給与計算業務全般を担当しています。現在の組織体制は私を含めた2名体制。この少ない人数で多くの業務を処理しなくてはなりません。
現在の従業員数は約700人(2021年9月末時点、うち社員数250名)を超えており、コロナ前は学生を中心に毎月40〜50名が入社する状況でした。当社の場合、従業員に占めるアルバイトの割合は約6〜7割ぐらいでしょうか。「クラウドハウス労務」の導入前は、全ての入社手続きを紙でやっておりました。ほとんどの人たちはスムーズに手続きを進められますが、書類に誤りがあれば、修正を依頼しなくてはなりません。回収に苦労しているうちに、次の月の手続きを始めなければならないのが悩みの種でした。
システム導入が必要と認識はしていましたが、忙しくてそのための時間をなかなか作れなかったのが実情です。コロナ禍でデジタル化を進めようという機運も高まり、導入の検討を開始しました。
小俣直之氏(以下、小俣)
入社手続きでは、短期間で正確に、様々な書類を回収する必要があります。代表的な書類としては、「雇用契約書」や「給与振込先届出書」ですね。このほか、「身元保証書」「資格免許証」など必要に応じて提出してもらう書類もあり、会社によって手続きで必要な書類はさまざまです。実は、大企業でもこの手続きには紙が残っているケースがまだまだ多い。会社側が用意する労働契約通知書の電子交付が可能になったのが2019年4月ですから、人事労務領域の電子化はこれから進んでいくフェーズです。ただ、コロナ禍をきっかけに、非常に速いスピードで利用が広がっています。
別のシステムから「クラウドハウス労務」に乗り換えたのではなく、ずっと紙だったわけですね。当時の手続きに関する課題をどのように認識していましたか。
大野さん
書類の回収率が気になっていました。ほとんどの場合、スムーズに回収できるのですが、書類によっては提出が遅くなるものもありました。例えば、「給与振込先届出書」のように、提出しなければ給与を受け取れないものは比較的迅速に提出してもらえますが、特に提出が遅れがちなものとして「身元保証書」があります。働く人たちには、早く現場に出たいという気持ちがありますし、現場としても早く活躍してほしい。でも、契約条件に合意したという手続きを後回しにすることは許されません。社会経験の少ない人たちの中にはその理解が浅い人たちがおり、どうにかしてコンプライアンス意識を高めてもらえないかと考えていました。手続きの効率もさることながら、会社としてのガバナンス強化も課題として重視していました。
「クラウドハウス労務」導入の決め手は
「俺の」様の課題に対して、Techouseからはどんなアドバイスや提案をしましたか。そのポイントについて教えてください。
小俣
「俺の」様へは「1. 業務負荷の軽減」「2. 従業員満足度の向上」「3. ガバナンスの強化」の3点を念頭に置いて提案しました。手続きをデジタル化すれば、会社側の業務負荷を軽減できますし、入社予定者にとっても簡単で、入社時から会社に良い印象を持ってもらえるでしょう。書類の回収がスピードアップすれば、契約締結前に業務に着手するようなこともなくなります。今後、人手不足は加速していきますから、人事も少数で回せる業務・組織づくりが必要になっていきます。「俺の」様の場合も2人体制ですし、これからビジネスを拡大する局面に入った場合も、人を増やすのではなく業務効率化で対応しなくてはならない。それが基本方針だとすると、デジタル化は避けて通れない。その状況に対して、「クラウドハウス労務」がはまったのだと思います。
※「クラウドハウス労務」の入社手続き画面
最終的に、「クラウドハウス労務」を導入することに決めた要因はどこにあったのでしょうか。
大野さん
複数の会社から提案をもらっていたのですが、ピンと来る材料を得るまでには至りませんでした。「クラウドハウス労務」で良いと思ったのは、「業務フローを柔軟に設計できること」と「手厚いサポート」の2つです。
小俣
一口に入社手続きと言っても、正社員とアルバイトでは内容が異なります。また、職種によって入社手続きのフローや締結書類が変わるケースもあります。お客様の導入時には、現在の業務の進め方を分析し、その会社にフィットした手続きを実装するようにしています。
労務管理をデジタル化する選択肢は他にもいろいろありますが、「クラウドハウス労務」はお客様の業務フローに合わせて、手続きの内容や回収方法を自由にカスタマイズできる「セミオーダー型」のシステムであることを最大の特徴としています。加えて、運用開始から定着までのサポートを専任の担当者が行う伴走体制をとっているため、導入して終わりということはありません。従業員1000人以上の大企業での採用実績が豊富で、入社手続きのような煩雑な作業をペーパーレス化したいと考えるお客様から支持をいただいています。
※「クラウドハウス労務」で業務フロー定義(カスタマイズ)を行っている画面
運用後にチューニングを繰り返して得た成果
大野様に伺います。手続きのデジタル化はどのようなプロセスで進めましたか。その途中で乗り越えなくてはならなかったチャレンジはありましたか。印象に残っている出来事があれば、合わせてご紹介ください。
大野さん
準備は2021年6月から始めて、7月頭から運用を開始しました。手続きのデジタル化自体はスムーズでしたが、実際に手続きを行う入社予定者のコンプライアンス意識を高めてもらうことがチャレンジでした。例えば、手続きを進めてもらうときの説明に曖昧な文言があると、複数の解釈の余地を与えてしまいます。「クラウドハウス労務」の場合、運用開始後も改善・構築が可能でしたので、従業員からの声を取り入れつつ、Techouseさんと共により良い手続きフォーマットを構築していきました。
小俣
私たちはお客様の運用が始まってからも、定期的にフィードバックを得る場を設定しています。例えば、書類の回収が滞っている場合、フローで問題がある箇所を特定した後、改善を実施します。
大野さん
経験上ここはこうしたほうがよい、などのアイデアを提供し、新しい業務フローに取り込んだつもりでしたが、実際には思うようなスピードで提出物が返ってこないこともありました。私たち人事としては入社予定者に分かりやすいようにと、いろいろな工夫をしているのですが、それがなかなか書類回収スピードに反映されないことにもどかしさを感じました。とはいえ、手続きの主役はあくまでも入社予定者なので、人事がどうこう言うことではないとも思います。
小俣
運用を始めると、導入前は想定していなかったことが起きるものです。初期の頃はかなり頻繁に質問をもらっていましたが、最近は減ってきました。これは大野様が運用の勘所をつかみ始めたからだと考えています。
運用開始後の改善について、「クラウドハウス労務」に対して具体的に何をどう行ったのでしょうか。
小俣
具体策の1つとして、「リマインド機能」の活用改善は回収率向上に大きく貢献しました。リマインド機能は依頼した手続きが未対応の従業員に対し、任意の間隔で自動メール通知する機能です。これを手続き作成時に設定した「5日間隔でのリマインド」から「2日間隔でのリマインド」へと修正しました。リマインド間隔のように、会社によってベストアンサーが異なる部分は運用後の結果を踏まえて改善を行うことで、より従業員にフィットした手続きを構築することができます。
新しい仕組みに変わって、どんなメリットを実感していますか。
大野さん
手続きが紙中心だった頃は、アルバイトの従業員からの書類は店長経由で本社に届くようになっていました。当然、紛失のリスクがありますし、時間もかかります。「クラウドハウス労務」の導入後は、入社予定者と直接やり取りができるようになり、「送りました」「もらっていません」のやり取りはゼロになりました。
また、私が確認したいことがあるときには直接確認すればよいので、書類の不備が劇的に減りました。肌感覚ですが、入社手続きに関わる業務負荷が50〜60%ぐらい減った印象です。以前は平均1週間程度だった回収期間が、今では2〜3日程度になりました。デジタル化で実現したいと思っていたことは概ね達成できたと思います。
小俣
仮に入力の不備があっても、デジタル化していれば修正もすぐできますし、店長さんたちも書類仕事の負担がなくなる分、現場の仕事に専念できますね。
「クラウドハウス労務」で良いと思った機能はありますか。よく使っていてこれはと思うものがあれば、ぜひ教えてください。
大野さん
入力するべき情報のガイドを出せる「ヒント機能」でしょうか。写真の撮り方の条件を案内するときなどに使っています。ヒントの出し方一つで回収率が変わってくるので、運用しながら改善を重ねています。
※「クラウドハウス労務」のヒント機能の画面
当面は手続きの効率化に専念予定
「俺の」様は「クラウドハウス労務」を活用しながら、今後、人事労務をどのように改善・発展させていきたいとお考えですか。
大野さん
今までは入社手続きのデジタル化・簡略化に注力してきましたが、身上変更の手続きなどへデジタル化の範囲を広げていきたいと考えています。人事の仕事には守りと攻めの2つが求められますが、当面は守りの仕事の効率化に専念するつもりです。
小俣
運用開始直後の問題は解決し、日々レベルアップが進んでいると認識しています。契約更新の手続きについてはいかがですか。
大野さん
更新ではそれほどの業務負荷はかかりません。提出物が多い分、入社前の手続きのほうが圧倒的に煩雑ですね。
年末調整にも「クラウドハウス労務」を活用されますか。
大野さん
はい、活用しようと考えております。これまで年末調整は、全従業員への書類印刷・郵送・回収……といった書類処理部分での負担はもちろんのこと、従業員からの問い合わせ対応やミスの修正など、細かな積み重ねの負担が大きく、かなり苦労していました。現状、導入に向けて機能を案内していただいている段階ですが、手続き画面がシンプルで分かりやすく、毎年の負担が大幅に軽減できるのでは! とワクワクしております。今後は、「クラウドハウス労務」の導入を良い契機として、煩雑な処理に追われるばかりでなく、社内のオペレーションや規定の整備など人事・労務部門から事業拡大を後押しできる存在でありたいと思います。
小俣
私たちの仕事に終わりがないことが、今日の大野様の話を聞いてよく分かりました。大野様のような人事の方々がもっと本質的なことを考える時間を作ることが私たちの役割です。これからも良い製品とサポートでお客様を支援していきます。